時をかける父と、母と
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時をかける父と、母と

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父は66歳。若年性のアルツハイマー型認知症であるという診断を受けた。一方で母は61歳で、がんステージⅣと診断された。そんな33歳の娘がイラスト・版画も含めて記録したエッセイ本。全88ページ。200部数限定で2019年6月に発行。 表紙カバーが、うすみどり・ピンク・あお・きいろの4色ありますが、色の選択はこちらにおまかせください。ご希望があれば備考欄に書いてください。ただしご希望色の在庫がない場合は別色となることをどうかご了承ください。 ◾️「はじめに」よりーー 我が家には、時をかける少女、ならぬ、『時をかける父』がいる。 主な生息場所はリビングのソファかダイニングテーブル。大概テレビを見ているか寝ているか食べている。 父は66歳。若年性のアルツハイマー型認知症であるという診断を受けた。 今日は何日? いまは昼なのか夜なのか。 いま家には誰がいる?   そもそも自分に子供なんていたっけ?  僕は働いたことがあったかな?  お母さんはどこにいったかな? 妻は?  おや、目の前に現れたこの人は僕の孫だっけ、娘だっけ?  いま、父の世界の中では、過去も未来も星座も越えて、他の人にはわからない速さで、毎日、誰かが突然消えたり現れたりしている。 もういまとなっては、娘の私にも、3年前の父のことが思い出せない。そのくらい父の変化は目まぐるしい。 だけど変わったのは父だけではない。 父が認知症であると診断された1年半後、 母 が が ん で あ る という診断がおりた。 発見しにくい場所にあったことですでに他臓器への転移もあり、すでに『ステージⅣ』であり手術もできないという。 「 が ん で す 」 「 ガ ー ー ー ン 」 ……っていう漫画みたいな展開は、実際、ある。 頭の中で「ガーーーン」という音がしたような気がした。 隕石が落ちてきたような気分だった。 そしてがん宣告の1年半後、母は逝った。 父が認知症であるという診断は、私たち家族にとっては意外ではなかった。明らかに様子のおかしい数年間をみていたから、むしろ病気を疑っていたのは家族である私たちのほうで、診断がでてホッとしたくらいだった。 父は認知症で、これからおそらくどんどん悪化していく。きっと近い将来に介護が必要になってくる。さあ、どうしよう。そんな悩みは母を中心に家族が抱えたけれど、母の病気は、私たち家族の「近い将来」に描かれていなかったのだ。 母のがん宣告を受けてから、私は、日々の記録をつけることにした。つけざるを得なかったともいう。 目まぐるしく状況が変化する中で、すべての感情を誰かに共有することはとても難しく、記録は自分の気持ちを吐き出す場所にもなっていた。 そして目の前でいま起きていることを、他ならぬ自分が忘れたくなかった。 自分のために書き始めた記録だったが、いつしかこれを他の方にも読んでもらいたいと思うようになった。 病気の当事者や家族の方々はさることながら、現時点では介護も死もあまり身近でないかもしれない30代前後の方々にも、我が家というサンプルケースを見てもらいたい。そして、ある日突然ひょいと目の前に現れる『病気』やひたひたと忍び寄ってくる『死』というものに少しだけ心構えをするヒントになれば、私の体験もいよいよ役に立つというものだ。 ……といった経緯で、認知症を患った父と、がんで逝った母を見送るまでのこの2年間の記録を中心に、家族の生活の一側面を公開することにした。なんだか暗い話のようにも思えるけれど、私の手元に残ったのは、ある家族の日常の記録に他ならない。 私たちは、それなりに楽しく生きていたんだ。 この日々が、そう暗くない大事な時間であったことを、私はいつまでも忘れずにいたい。