30代後半で、東京から岩手県・紫波町へ移住して以来、自分の身に起きているゆるやかな変化にまつわる短編エッセイ集です。
紙選びからこだわり、手製本で糸とじをしたZINEの手触りをぜひお楽しみください。
<はじめに、より>
東京都・中野区から、縁もゆかりもない岩手県・紫波町へ引っ越してきた。
それまでの私の生活圏はコンクリートだらけで、土を踏むこともなかった。長時間電車にでも乗って、山や海を見たくなることもたまにはあったけれど、それは非日常としての旅だった。今の私の生活では、家を一歩出れば山が見えるし、3分歩けば田んぼにあたる。4月ごろから、夜はかえるの鳴き声が響いている。
大きく環境が変わっても、ついていく人間の変化には時間がかかる。一年経って、最近の私はいつも、ゆるやかな変化に囲まれて生きているな、と感じている。
そこには「一から土を作る」という大袈裟さはない。自分の目の見える範囲から地ならしをするような小さな変化を積み重ねていって、いつの間にか目が、体が慣れている。私の身には、そんな変化が起きている気がする。
この変化を私自身も見逃さないよう、観察するように、少しずつ書き重ねていきたい、とふと思ったのだった。
<仕様>
サイズ:約146mm x 103mm(A6サイズより少し小サイズ)
紙:Aプラン/Dクラフト/トレーシングペーパー
印刷:リソグラフ印刷
全32ページ